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「制度上はともかくとして、死んだ人と結婚するなんて、どういう気分なんだろうね。」
和成はそう言って話を締めた。
「どちらも、辛いだろうね。」
詩織は思わず呟いた。
「え?」
「何でもない。」
詩織は誤魔化して、そして心の中で和成に謝る。誠が取り憑く相手として、詩織は和成を指名した。他には誰も思いつかなかったのだ。
詩織が合図すると、和成はゆっくりと気絶して、そして項垂れる。誠の魂が乗り移ったのだ。そして再び起き上がる。
「誠なの?」
「うん、上手くいったみたいだ。でも本当にこれで良いんだね?」
誠が和成の声で言った。
「分からない。でもこうするしかないんだと思う。」
詩織が言う。そして誠の指に触れた。体温の確かな感触がある。それは誰のものでもない、誠の体温なのだと、詩織は思った。これで良かったのだ。詩織は自分に言い聞かせるようにして、誠の手をとり店を後にしたのだった。
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