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4 プリクラ
家に戻った碧海は机の整理をしていた。
明後日はいよいよ卒業式だ。
机の奥からプリクラが出てきた。
ゲッ!タクヤじゃん。元カレだ。渋谷に遊びに行ったときに撮ったヤツだ。
高1の2学期に碧海のクラスに転校してきたタクヤは、バカなうえに団体行動ができず、クラスでいじめにあっていた。
しかしいじめっ子の榊が給食で出たマヨネーズを碧海にかけ、卑猥なことを言ったときだった。タクヤは渾身のパンチで榊を殴った。
おかげで親まで呼び出されて怒られ、クラスの人間からは「キレると何をするかわからない」とさらに嫌われるようになった。
だが、碧海はそんな熱くて真っ直ぐなタクヤに興味をもちはじめた。
学校帰りに一緒にタクヤの家の裏手にあった公園に行ったりした。タクヤのよくない噂を近所のオバサンから聞いた。
『あそこんちのお父さんヤクザらしいわよ?』
が、そんなことはどーでもよかった。
高1の秋、老人ホームでの福祉体験をした日の夜、公園で2人はファーストキスをした。キス以降、碧海に対してぎこちなくなってしまったタクヤだったが、タクヤが引っ越すことを知ると、引っ越しの前日、碧海は大泣きしながらタクヤの部屋にやってきて、ちぎれんばかりに手を振ってタクヤを見送った。
「元気にしてるかなぁ?」
卒業式前夜、ケータイで碧海とイロイロしゃべった。
「卒業かぁ?何だか切ないね?」
僕は夜食のペヤング焼きそばを食べるところだ。湯きりをする。ジョボショボ、ベコン!熱のために流しがへっこむ。マヨネーズと青のりをかけて絡める。
「もう10時だよ!」
おふくろから叱られた。
「怒られてやんの」
「聞こえた?」
ドラマの話なんかをした。
キムタク主演の『Good Lack』とか稲森いずみが出てる不倫ドラマ『年下の男』なんかを見てる。
「ショウちゃん」
碧海がユンソナの真似をした。
「明日遅れたらまずいから切るね?」
切るな!伝えたいことがあるんだ。
ツーツーツー……。
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