6 焦燥

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6 焦燥

 卒業式のあと、ヒロユキやエースケとカラオケに出掛けた。初めは3時間だけのはずだったが延長した。最後に歌ったウルフルズの『明日があるさ』は耳に残った。みんなで楽しく歌ってはしゃいだ。  どうやってコクろうか?みんなが歌っているとき考えていた。あまり恋愛は上手な方じゃない。  今まで好きな人はいたが片想いで終わっている。 『エースケって初恋はいつ?』  ミスチルの『イノセントワールド』を歌い終えヒロユキが言った。 『何だ唐突に?』 『イヤ、もうお別れだしさ?聞けないじゃん?』 『16のときだ。来年結婚する予定だよ』  ショックだった。下ネタ好きだし?女がいないから欲求不満でそーゆー発作が起きてるんだと思ってた。 『当然チューとかもしたんでしょ?』 『たりめーじゃん。絡めるととろけそうになるぬ?』 『エッチは?』 『捨てた。16の夏休み、彼女の車んナカで』 『エーちゃんやるじゃん?え?もしかして年上?』 『エリさん覚えてる?』 『あー教育実習んときの?大学生だったよね?』  どことなくEvery Little Thingの持田香織に似ていた。 『モッチーとやったのか?』 『ケンタッキーもウカウカしてると野蛮な狼たちに、碧海ちゃん奪われちまうぜ?』 エースケは何故か僕をそう呼ぶ。  エースケがブレザーからマルボロを取り出した。 『もう、センコーたちから監視されることもねぇ』 気持ち良さそうに煙を吐き出した。  あーあーエースケに負けるとはな?  プレイボーイをベッドに寝転がり見ていた。  安めぐみ胸デカイ!  どことなく碧海って安めぐみに似てるんだよな?  はぁー、キスもまだだし?先が思いやられる。  恋って何なんだ?キスをしたら恋なのか?エッチをしたら恋なのか?焦りたくない。今のままの関係を保っていたい。こんな気持ちははじめてかも知れない。もしかして、恋ってゆーのは好きって思った時からがそうなんじゃないか?  ありのままの自分を素直に見せることが1番なのかも知れないな?  山手短期大学は港の見える丘公園の近くにある。  文学部専攻だ。階段教室で芥川龍之介ゼミを受けていた。『杜子春』は面白かった。まるでファイナルファンタジーみたいだ。  講義が終わると碧海が近づいてきた。  彼女も同じ大学に進学したのだった。 「ねぇ?今日講義が終わったら桜でも見に行かない?」 「あーでも、バイトあるんだ」 「じゃあ、それまで待ってる」
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