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7 桜
キャンパスの地下にあるコープでバイトをしていた。レジ打ちもパートの芝田さんのサポートもあって何とか出来るようになった。芝田さんはどことなく深津絵里に似ている。2児の母だ。
バックヤードでペットボトルや缶コーヒーに値札を貼ったり(値札貼り機って機械があることを知った。手でペタペタ貼るわけじゃない。)、ポップアートで店内を明るくしたりする。リボンを飾ったり、ミッキーやドナルドの絵を描いて貼ったりした。
6時近くなると閉店の準備、モップで床を掃除してると芝田さんが売り切れたパンやおにぎりをビニールに入れてくれた。
「帰るまでに腹ごなししないとね?」
「ありがとうございます」
「やぁ?」
碧海がやって来た。ピンク色のミュールを履いている。ラインストーンがキラキラしている。
「ミュールってちょっと古くない?」
広末涼子似のバイトが言った。
巻き髪、ニーハイブーツ、背中見せファッション。「アンタには関係ないと思うけど?」
「年上には敬語使いなさい」
「あー、ハバネロだぁ。くださーい」
「人の話聞いてる?それにもう閉店だし?」
「そりゃあてーへんだ」
この年はSMAPの『世界に一つだけの花』とか森山直太朗の『さくら(独唱)』が流行った。
キャンパスを出て元町公園へと歩く。
「最近あったかいね?」
慣れてないのか碧海は靴擦れになってしまった。
「脱いじゃえ?」
可愛そうだったからおんぶしてやった。
「あー重い」
「そりゃあヒドいんじゃん?」
公園は桜が満開だ。海風が吹きヒラリヒラリ舞う。「ウワーキレー」碧海が僕の背中から降りる。
夕暮れの外人墓地はちょっぴりホラーな感じがする。
スイス人貿易商エリスマンの白い館や、外国人向けアパートの山手234番館などがある。
中でもベーリックホールはスゴかった。
イギリス人貿易商、べリック氏の邸宅でスパニッシュスタイルを基調としたベージュ色の屋敷だ。
屋根の上にチョコンと煙突が出ている。
チムチムチェリーに出てくる煙突みたいだ。
「資料館はもう閉まっているみたいね?」
「死霊館?お化けでも出るの?」
碧海がくだらないことを言う。
ベンチに座った。
踵のところが赤くなってる。
「帰ったらマキロンやるんだよ?」
「お父さんみたいだね?」
おにぎりを碧海にあげた。
「うわぁータラコだぁ」
「タラコ好きなの?」
「うん、でもケンはもっと好き」
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