第二回 死霊の恋

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 だが乱丸は女の色気に迷っている余裕はない。彼の心には、黒夜叉の発した言葉が突き刺さっていた。 「誰の…… 事だ?」 「あちきがついてるから安心してくだせえよ。いく時は一緒です」 「ごまかすな」 「あいたた! 小突かないでくだせえよ! 旦那って、女をいじめて喜ぶ変態ですか?」 「お、お前な……!」 「そんな怖い顔しなくてもいいじゃありやせんか…… じゃあお名前をお教えしやしょう。その方の名は佐々木小次郎といいやす」  巷の講釈、上演物で聞く名であった。兵法(武術)天下一の名誉をかけて、宮本武蔵と勝負に臨み、敗北して死んだはずではなかったか。 「しかし小次郎殿は生きていらっしゃいやした…… しかも、生きながら魔性に転じた剣客でやす。あちきとしては、旦那が小次郎殿と出会わない事を祈るのみでさあ」
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