第四回 食人鬼

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 越前の言葉の意味が乱丸には理解し難い。  あるいは越前ですらも理解しておらぬ。  越前もまた数奇な運命に導かれた者であり、彼はその超自然的な何かを――  天の声、意思といったものを乱丸に伝えたかったのだ。 「わしは残酷だ。魔物を斬れとは、おぬしに死ねと言うのと同じ事だ」 「命ある限り、やり遂げまする」  乱丸は伏せていた顔を上げた。恐れも迷いもなかった。 「その心意気、わしには心地よい…… 死ぬなよ、乱丸。土産話を聞きたいからな」 「は」 「ところで…… あの娘は何だ?」  越前は道場の端に目を向けた。そこには黒夜叉が正座して二人の様子を見つめていた。 「旦那あ、かっこいい~」  思わず二人が拍子抜けするような事を口走る黒夜叉。越前は咳払いを一つする。 「今、大事な話だ」 「あちきには乱丸の旦那が大事でやす」 「うむう……」  越前は眉をしかめ、乱丸に向き直った。 「乱丸よ。わしは女は好かぬ」 「は……」  乱丸の声は緊張していた。 「名は?」 「く、黒夜叉と……」 「ふむう…… 黒夜叉とな…… わしは好かぬ…… が、黒夜叉は可愛いではないか!」  越前が間の抜けた高笑いするのを見つめ、乱丸はため息をもらした。 「可愛いだなんて…… そんな~」     
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