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目を閉じた瞬きの間に、乱丸の周囲は一変していた。
周囲は暗黒に包まれ、その暗闇に無数の魔物が蠢いている。
(何!)
驚きも束の間、周囲に蠢く魔物達が乱丸に襲いかかった。
大小様々な獣のような魔物達は、乱丸の体に食いつき肉を引きちぎる。
「ぐおおおお!」
全身を走る激痛に乱丸は絶叫した。
腕も食いちぎられ、内臓も引きずり出された。
顔や頭部にも魔物が食らいつき、骨と肉が引き裂かれる。
遂には乱丸の体は五体を引きちぎられてバラバラになった。
後には、無数の魔物が乱丸の屍を食らっていた……
“――狂死したか”
背に羽の生えた女の魔物は、うつ伏せに倒れた乱丸を見下ろしていた。五体をバラバラにされる光景は、女が乱丸に見せた幻覚であった。
“他愛のない”
月光に照らされて女は妖艶な笑みを浮かべた。
起き上がらぬ乱丸を一瞥し、女は場を立ち去ろうとした。
夜空を見上げると、背の羽を左右に大きく広げる。一見、透明な羽の表面が七色に輝き、りぃんと鈴に似た音色を立てた。
“人間ある限り我は不滅……”
長い眠りから覚めた彼女は、誕生の喜びにいささか興奮していたのやもしれぬ。
不敵にして妖艶な笑み、深紅に輝く魔性の瞳。
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