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無言で立ち、無言で功典のことを見ているその男にも女にも見える人物はこういった。
「どうして君は、運命通りにならないんだろう」
「は?何言ってんだ?」
その人物は、自分のことを嶽蘭と名乗った。
ちなみに性別は両性らしく、どちらとも言えないと言われてしまった。
「以前も、君は運命を変えた。そして今回も」
「だから、何言ってんだって。全然分かんねえんだけど。ミソギ、水たまりの水飲むなっての」
「・・・・・・」
功典とミソギは普通の人間には見えないはずだが、その嶽蘭にもミソギは見えているらしく、ミソギのことを見ていた。
曇旺とは違って華奢な身体をしているようにも見えるが、目つきもまるで逆で、冷たく全く微笑む様子はない。
わけがわからない功典は何用かと聞こうと口を開くが、嶽蘭は功典たちに背を向けると去って行ってしまった。
そしてすぐに現れたのが曇旺だ。
曇旺の話によると、あの嶽蘭は俗に言う“神様”というものらしく、その中でも“運命の神様”と呼ばれている存在だとかで。
「ああ、それで」
と納得した功典だが、「ん?」と何かに引っ掛かったようだ。
「運命の神様ってやつは、俺を殺そうとしてたのか?」
「ああ、それが運命だそうだ。だが、間波奈功典は死ななかった。それも2回もな」
「2回?」
「覚えてないのか?まあ、昔のことだからな。で、次のチャンスがさっきだったってわけだ。それでも死ななかった。普通はあいつに逆らえねえからな」
そりゃそうだろうと、功典は曇旺の話を聞きながら、指先で頬をぽりぽりとかいていた。
曇旺も自分は神様なのだが、嶽蘭とはまた別の神様だとか何だとか言っていたが、それよりもその後に言われたことの方が驚愕で、功典の頭からそこの部分はすっぽりと抜けてしまった。
「は?意味が・・・」
「だから、どうせまたあいつに狙われて死ぬんだから、それまで暇つぶしとして、ちょっと俺の野暮用を手伝ってくれねぇか?本業じゃねえんだが、この世に留めておくわけにもいかねえんだよ」
曇旺から言い渡されたのは、この世に未練を残し亡くなっていった人達を成仏させてほしいというものだった。
正直、幾ら自分が死ぬからとはいえ、面倒臭いことには巻き込まれたくないと思った功典だが、なぜかミソギがOKの返事を出してしまったため、やるしかなくなった。
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