世界が青に染まる頃

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「あんたみたいな奴は、一度青に染まった世界へ行った方が良い」 翔子は空になった缶を、茫然としたまま動けないでいる夏美の机の上に置いた。そして、ロッカー上に残っていた青いペンキを二缶手に取って、友紀の方へ向かった。 「はい、友紀の青。こんな奴ら、一回染めちゃった方がいいよ。あ、その前に……」 翔子は缶を一つ友紀に渡した後、机上に置いていた原稿用紙を、無言のまま立ち尽くしている教師の元へ持って行った。 「先生、この文字は間違いなく友紀の文字です。そして……先生もこれを読んだ方が良いと思います」 魂が抜けたような教師の顔を見た友紀は、涙を拭き取って小さく微笑んだ。 教室の中央で、缶の蓋を開けた友紀と翔子――周りを囲む生徒たちの足音や悲鳴が響き渡る中、杯を重ねるようにペンキの缶を合わせると、そのまま一気に上下左右へ振り続けた。 缶の中から無造作に飛び散る、真っ青なペンキ。天井、床、人、物、服――色々なものが青に染まっていく。 私はようやく、自由への階段を上る勇気が湧いた――理解してくれる者のお陰で。 そしてこれからも、世界を染めていくんだ。自分自身の手で。

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