狼さん、ご一緒しましょ

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 「先生!出来ました!」  「どれどれ」  新田透、大学2年生の男は、小学5年生の男の子、賢の家庭教師をしていた。  まだ家庭教師を始めて一カ月にもなっていないが、最初は可愛い子だな、と思っていたのだが、最近はちょっと違う。  それは、きっとアレが原因だ。  家庭教師を始めて5日経ったときのこと。  「新田くんは、大学何処なの?」  休憩をしていて、賢の母親が二人にお菓子と飲み物を用意してくれた。  「あ、僕は・・・」  遠慮がちにいったその大学名は、決して有名なものではなかった。  それでも、透にとっては自分の好きなことを学べる学校であった。  「え?・・ああ、そうなの・・・」  大学名を聞いた途端、母親の表情が変わった。  変わった、というよりも、明らかに馬鹿にしたように鼻で笑ったのだ。  透がトイレを借りて、部屋に戻ろうとしたとき、こんなことを話していた。  「大した大学じゃないわね。そんな先生に教えてもらったって意味ないわ。賢、別の先生に頼みましょうね」  「え?どうして?」  「だって、大学は大事よ?確かに新田くんは良い人だけど、でもねえ。賢には良い大学に行ってほしいもの。こう言っちゃなんだけど、新田くんが行ってるような大学になんか行ってほしくないわ」  「先生じゃダメなの?」  「そうよ。賢は新田くんよりも賢くなるの。ずっとずっと良い未来が待ってるのよ?大学のこと分かってれば、頼まなかったのに」  母親がそんなことを言ったものだから、きっと賢もそれで納得したのだろう。  その日からというもの、新田を馬鹿にしたように話しかけてくるのだ。  「僕ね、先生よりも良い大学に行くんだ」  「ママがね、人は生まれたときから将来が決まってるんだって言ってた」  「だからね、先生になんか教えてもらっちゃダメなんだって」  新しい家庭教師が決まるまでの間のツナギということで、新田はまだここに来ていた。  賢の父親は、有名な企業の幹部のようで、家も立派な佇まいをしている。
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