04(ハニートラップ)

4/14
前へ
/62ページ
次へ
 私は1週間の暇を与えられた。初任給は活動費という名目で、60万円が口座に入った。勿論、表向きには給与だ。通帳にもそう記載されてる。  私は次の日の朝、ベッドに寝っ転び、ニヤニヤしながら通帳を眺める。…………いけない、いけない。これは諜報の活動費。勝手に遣っちゃダメよね。  リンリン…………リンリン…………。携帯電話に通話だ。知らない番号だな。詐欺だったら、めんどくさい。でも今のご時世、違法電子通信処罰法がある。例えば、1億円を振り込みますよ~、なんて文言の迷惑メールを送ったとすると、詐欺師は必ず相手に1億円を振り込まないといけない。詐欺師への取り立ては、国に登録された極道が行う。こうして、国に登録された極道と非登録の極道を潰し合いをさせる、恐ろしい法律だ。  とりあえず、出てみよう。  リンリン…………リンリン…………リッ……。 「もしもし、どちら様?」 「レツ子さん、久しぶり。同級生だった森山だよ」 「森山君? 何か用? それと、レツ子って呼ばなくていいから」  この森山って人は苦手なんだよな~。ナイト君の腰巾着で、正に自分一人の力じゃ何も出来ない人。しかも、自分がモテると勘違いしてた。 「じゃあ、レツ。話があるんだけど、今から会えない?」  何コイツ、呼び捨てで話せる仲だと勘違いしてる? しかも、会いたい? 「ごめん。忙しいから」 「仕事? 仕事は何をやってるの?」 「あなたに関係ないでしょ」 「関係大ありだよ。仕事の話だ」  えっ!? 森山もインテリジェンス? 「仕事の話って何?」 「それは会ってからね。レツの自宅近くに喫茶店とかある?」 「北に100メートルくらい歩いた所にカフェがあるよ」 「じゃあ、10時にそこへ集合しようか。地図アプリで場所は確認しておく」 「うん、分かった」  私は気分が乗らないけど、とりあえず、10時に近所のカフェに行く。  テラス席に森山が座っていた。私に気付くと、手を挙げる。格好良いと思い込んでるのだろう。顔は不細工だ。リクルートスーツにリュックサック、まるで就活生だな。 「レツ、久しぶり」 「仕事の話って何? 私、1週間の暇を与えられてるの」 「謹慎?」 「違うわよ」 「じゃあ、仕事の話をするね。一緒に成功しようぜ!」  成功? 急に何を言い出してるのコイツ。インテリジェンスじゃなさそうね。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加