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「森山君、成功って何? 何をもって成功と言うの? 定義は?」
「成功は成功だよ。うちの会社は世界展開しててさ。サッカークラブのスポンサーもやってるんだ」
「えっ、話が見えない。何て言う会社?」
「あっ、あのう…………。ガンマ・ロードだよ」
森山は急に淀み出した。詐欺ね?
「聞いた事もないわね。詐欺?」
「違うよ。世界展開してて、サッカークラブも所有してるから」
「典型的な詐欺の手口じゃない」
「じゃあ、これ見て」
森山はリュックサックからパンフレットや雑誌を取り出して、私に見せてきた。
サプリメントの紹介やらシャンプー、台所洗剤の水回り商品の紹介やら。典型的な詐欺だ。
「ここをよく見て」
「どれどれ~」
雑誌には、賞味期限切れの芸能人達が、ガンマ・ロード最高とプラカードを掲げていた。何か宗教みたい。
「芸能人もやってるんだぜ~。詐欺じゃないよ」
「いやいやいや。典型的な詐欺だから」
「成功は約束されてる! 大丈夫さ」
簡単に断って、しつこく電話されても困るしな~。って、森山は汗だくじゃん。怪しい……怪しすぎる! ちょっと足下を見てやるかな。
「分かったわ。私、やる」
「やっぱり、レツは俺の女だぜ」
気持ち悪い。ストーカーになられても困るしな~。あれで行くか。
「1つ条件があるわ」
「何? 何? 俺と付き合いたい?」
この勘違いお門違い宗教詐欺不細工野郎……!
「110万円ちょうだい」
「えっ!? 何で?」
「成功が約束されてるなら、少ないもんじゃん」
「それは犯罪だよ」
「大丈夫。贈与税が掛からないギリギリだから。さあ、110万円ちょうだい。そしたら、頑張るから」
「えっ……あのう……そのう……。そんな大金はない!」
「先行投資も出来ないの? そのガンマ・ロードって会社に未来はないわね」
「知らないからな! 俺が成功して、金持ちになっても、言い寄ってくるなよ?」
「じゃあ、帰るね。逆ギレするような奴にも未来はないわね」
私は席を立ち、帰ろうとする。
「待て待て待て! チャンスを逃すぞ!?」
森山は涙目で、私の腕を掴んだ。
「離せよ。不細工」
「鏡見た事ねえのかよ!?」
「ブーメラン乙」
私は、森山の手首を捻り、関節をきめる。
「痛い痛い!」
私は、森山を転ばして、カフェを後にする。
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