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「あと、包茎も嫌です!」
「レツさん、君は突拍子もない事を言うね。ハニートラップまではさせられないよ」
「男にトラウマを持ってますので、男を騙すなんて最高ですよ」
あれ? 私、何を言ってるの? 人柄の良さそうな、オジサン官房長官の前で何を言ってるの? 口から本音がポロポロ出てしまう。
「まあ、いいでしょう。まずは訓練を受けてもらいますよ」
「訓練ですか。具体的に何をするんですか?」
「レツさんは柔道黒帯みたいだね。体力面は心配ない」
「パパに無理やり格闘技やらされて育ちましたから。それが活きます?」
「そうだね。訓練内容は裁判の傍聴をしてもらい、日本国の現状を理解してください」
「裁判の傍聴ですか。分かりました、やります」
「傍聴してもらう裁判はこちらで選びます。詳しくは、鬼頭派君……お父さんに聞きなさい」
「分かりました」
コンコンコン。ドアをノックする音だ。
「入りなさい」
私は端に寄る。ガチャッと入ってきたのは、ナイト君だった。何で!? とりあえず、知らない人のふり、知らない人のふり。
「お呼びですか、田中官房長官」
「この、レツさんと一緒に訓練を受けてもらうよ」
「いよいよ、俺もエージェントになれるんですね?」
「訓練をパスしたらね」
ナイト君がこっちを見る。なんて言われるんだろ? なんて返そう?
「よろしくっ……。げっ! さっきの女!? 何でここに!?」
「よろしくね。ナイト君」
「2人は、面識ありますよね? 同じ学校だったのだし。仲良くね。早速、明日から訓練を受けてもらいますよ。竹下君、車でレツさんと一緒に行きなさい」
「分かりました」
えっ!? ナイト君はもう車を買ったの? 免許は私も学割で取ったけど、車を買うお金なんて……ナイト君は、お金持ちなのね。
「では、2人とも。帰っていいですよ」
「はっ!」
「はい」
私はお辞儀、ナイト君は敬礼をする。
ナイト君は足早に去っていった。私はドアを開ける時にもう一度お辞儀をして廊下に出る。良かった。パパが待っていてくれた。
「レツ、エージェントの打診を受けてくれたか?」
「まだ半々。訓練をするみたいだし」
「裁判の傍聴だな。気楽に行こう」
「帰ろ」
「ああ」
――帰りも、タクシーだ。そういえば、電車ってあんまり乗った事ないな~。みんなは、電車好きなのに。よそはよそ、うちはうちか。
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