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結末
「この後、調査隊の人が来て、僕らを街まで運んでくれたんだ。レインもアリヤもいたけど、いい人がいて、事情を話したら快く馬車に乗せてくれた。その後彼女たちがどうしているかは、ご想像におまかせします。ただ、彼女たちは、今もどこかで生きています」
僕が語り終えると、目の前の子供たちが、躊躇いがちに拍手を送ってくれた。
その中には、ルシアも混ざっていた。
僕はあの後学校に通い、大学へ行き、社会的な地位を確立してから語り手の活動を始めた。
アリヤのお母さんの死を、決して無にしてはいけないと思ったからだ。
初めは、ルシアという単語を出しただけで民衆から止められたりしていたが、あの火砕流を見ていた人、あの森を大事に思っている人の共感を徐々に買っていき、ついには学校に招待されるまでになった。
ルシアの社会的な地位は大分良くなって来たが、僕はまだまだだと考えている。
世界中の人が僕の話を聞き、そしてルシアを認めてくれるようになるまで、僕は納得しないつもりだ。
僕が壇上から降りると、入れ替わりで女性が上がる。この学校の先生だ。
髪は、一見して判断できないほど濃い、青。
彼女はルシアだが、あれは生まれつきの色ではない。ある出来事を境に、あの色へと変わったのだ。
しかし彼女はそれを醜いものだとは少しも思っていない。
僕はそのことを、彼女から直接聞いた。
先生が締めのあいさつを終えると、子供たちは我先にと出口に群がる。
空間を喧騒が包んだ。
しばらく壇上で子供たちを守るような優しい眼差しで見守っていた先生が、ふとこちらを向いて、言った。
きっと聞かせる気のない、小さな声。
しかし、兄妹にはそれだけで十分だ。
ありがとう、お兄ちゃん。
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