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解放された手に熱さを感じながら、隣で寝る体勢に入る葉築さんに声をかけた。
「……んー……どうだろ?……仲悪くはないんだよ」
そう答える彼の目は虚ろだ。
「鷲塚さん、泊まれる?」
「……どうしよう」
「終電、間に合わないだろ? ……泊まれば? 明日は土曜日だし休みじゃん……」
「……葉築さんは、資料作らなきゃいけないんじゃないの?」
「……んー……家でも……でき……る……」
眠たげな声はプツリ……と切れて、気持ち良さそうな寝息が隣から聞こえてきた。
「……寝ちゃった……」
身体がベタついてちょっと気持ち悪い。
お風呂、入ろう。
そっとベッドから起き上がると、足元に彼のネクタイが落ちていた。
先ほどまで性行為の道具に使われていたブランドもののネクタイーー
昼間はブルーで鮮やかな光沢を放っていたのに。
よれてシワだらけになったそれを、 拾い上げ、気持ちばかり伸ばして、ハンガーにかけた。
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