afterimage 残像

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小三の時に別れた父は、仕事柄、帰ってきたら、家ではいつもランニングと作業着のズボンというイデタチだった。 30過ぎていたとは思うけど、お父さんの身体は日焼けして、引き締まってカッコ良かった。 そのムキムキの腕に、兄と二人、ブラブラとぶら下がって遊んでたっけ。 無口ではあったけど、優しい、逞しいお父さんが大好きだった。 「……おい、そこの一年、話聞いてたか?」 月一の委員会の話し合い。 私は、ついボンヤリし、話を聞いてなくて、橋元先生に注意を受けてしまった。 「……あ、あの……はい」 話を聞いてなかったのに、ハイと答えてしまった。 委員長が黒板に書いていたのは、学校前の横断歩道での挨拶運動の日程だった。 「お前、責任もってやるか?」 「え」 「早朝からの運動だよ。皆、電車通学だったり朝練があったりてして人数が足りない。そういう規制がないのなら、お前やってくれ」 「……はぁ」 ……まだ、私の名前を覚えていない橋元先生は、お前呼ばわりして、私に当番を委ねてきた。
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