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「何でそんなこと言うんですか?」
「だって、お前、俺のこと好きじゃないだろ。好きならさ、そんな冷たい顔しないんだよ。気付いてた? お前、大概、俺のこと見てないし、デートしてるってのにずっとどうでもよさそうだった。なあ、正直に言えよ。罰ゲームなんだろ?」
「罰ゲームじゃないです」
「いや、罰ゲーム以外に何があんだよ……もう止めよう。一週間って言ったけど、今日で終わり。お前もその方がいいだろ」
高瀬は俺に背を向け、歩き出す。
引き止めようにも、言葉が出て来ない。
何より、俺にもう、そんなやる気はなかった。
終わってしまった。
また何も出来なかった。
折角のチャンスを、生かせなかった。
自分が不甲斐なくて仕方ない。
俺はいつも何も出来なくて……
「……っ」
泣きたくなって、俯く。
だが、涙が出てくることはなくて、余計惨めな気持ちが加速していくだけだった。
「泣いてんの?」
目の前から声がした。
恐る恐る顔を上げると、高瀬が立っている。
「あ、泣いてない。なんだ、つまんねぇな。泣いてたら抱き締めてあげようかと思ったのに」
「……何で」
「これ」
と、高瀬が何かを差し出してくる。
受け取ってみると、それは先程観た映画のパンフレットだった。
意味が分からない。
顔に出ていたのだろう。俺が口にしなくても、高瀬は答える。
「お前は結構楽しそうに観てたから。今日付き合ってくれたお礼」
「……帰ったんじゃないんですか」
「あれでお別れは後味悪いだろ。でも、まだいてくれてよかった。罰ゲームだってのに、」
「罰ゲームじゃないです」
「お前もしつこい奴だな」
高瀬が素で呆れたような顔をしていたが、俺は続ける。
「だから、俺は罰ゲームで告白したわけじゃないです」
「え、まだ言うの、それ。どう見たって本気じゃないのに?」
「俺は本気です」
「……譲らねぇな。じゃあさ、そんなに本気だって言うなら証拠見せろよ」
と、高瀬は何処か勝ち誇ったような顔をした。これで俺が言い返してこないと踏んだのだろう。
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