さよならの理由

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灯りひとつない暗闇の中、僕たちは寄り添い冬のような寒さに耐えていた。 しゃがみこんだ床から、寄りかかった壁から体温が容赦なく奪われていく。ぶるりと震えると隣に座った彼女が微かに笑った気がした。暗すぎて目は役に立たない。かすかな音と触れ合う肌の感触だけが頼りだった。 「寒いね。」 「うん。」 彼女が腕を擦る。きっと彼女の真っ白な肌は寒さでいつにも増して青白くなっていることだろう。僕の黄色い肌とは違い彼女は雪のような白い肌を持っていた。 僕らは怪物に捕らわれている。いや、閉じ込められていると言った方が正しいか。 僕らは怪物のコレクションなのだと思う。 ここに連れてこられたときは驚いた。見たこともない色とりどりの肌の人たちが一ヶ所に集められていたのだから。 怪物は僕を寒い部屋へ押し込むと分厚く大きな扉を閉めて去っていった。外から入ってくる光が無くなった部屋は真っ暗になった。扉に鍵はかかっていなかったが、びくともしない扉に逃げることは諦めた。
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