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第1話 ヨウカイ・コトハジメ
蒼井戸葵は妖怪である。
それがわたし、高倉泉の見解だ。
季節外れの風邪で学校を休んだ。
一週間ぶりに登校したらクラスに見知らぬ男子がいた。
「転校生?」
目線で彼を指して尋ねると、臨席の桐野塔子は「は?」と眉をひそめた。
「何言ってんの? 一年のときから同じクラスじゃん」
呆れた声で返されて、今度はわたしが「は?」となる。
「そうだっけ?」
塔子とは確かにそうだが、あの男子に見覚えはない。
「まだ熱があるんじゃない?」
塔子はわたしの額に掌を当て、う~んと首を傾げた。
「高熱で脳細胞が破壊されたのかもね」
「怖いこと言わないでくれる……!?」
睨んだとたん授業開始のベルが鳴って先生が入ってきた。急いで席に着く。
「きりーつ。れー。ちゃくせきー」
かったるそうな日直の声が響く。
授業が始まって、ふと気付いた。
──アイツの名前、なんだっけ?
いくら考えても思い出せず、わたしは青くなった。
ヤバい。まじで脳細胞が破壊されたかも。
(40度超が三日も続いたからなぁ)
どうしよう。病院行ったほうがいい?
悩んでいるうちに午前中の授業が終わり、昼休みになり、午後の授業が終わった。
その間ずーっと考えていたが、見知らぬ男子の名前はやっぱり思い出せなかった。
だって見覚えがないのだ。
一年のときから一緒と言われても、全然記憶にないんですけど。
そんなことってある?
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