あの溶けた瞬間の断片に

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 そんな私の前にその少女は突然現れた。まるで夜の街を照らす月光から染み出るように。  少女は小さな丸い頭からその細いロウソクのような華奢な体を装飾するように、日本画に描かれた美しい滝がすーっと流れるように長いきれいな黒髪が腰まで伸びていた。目は異星人かのように異様に大きく、肌は病的に青白かった。まるで人形のような子というか・・、というよりも生きているように見える人形みたいだった。  少女は裸に頼りなげに羽織っただけの黒い薄地のワンピースに厚底サンダルをつっかけ、夜の街の華やかさの影の部分に立っていた。  少女は圧倒的に人間を超越して美しく、周囲の闇の中でほの白く輝いていた。しかしそれは妖しげで危うい光だった。 「君はいくつだい」  私は声を掛けた。声を掛けざる負えなかった。何かそんな状況とも心情ともつかない何かがあった。というかあってしまった。私はそれに逆らえなかった。 「十七。もうすぐ十八になる十七。あまり意味はないわね」  その子は明らかに補導員と分かる私が近寄っても、逃げようとはしなかった。むしろ静かに挑みかかるようにその場に立っていた。 「あなたが私を立ち直らせてくれるの?」  少女がその真っ赤な天然の赤い顔料を裏に塗り込めたような黒い瞳を、やはり挑むように私に向けた。     
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