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「私の目の前には優香がいたわ」
少女の目は微かなブレも無くしっかりと私を捕らえていた。
「小学校からずっと一緒だったの。高校は別々になっちゃったけど、でも、かけがえのない親友だった」
少女は私を試すように私をその闇のような目で更に見つめた。
「優香は死んだ」
少女の鉄仮面みたいな無表情は完全な無表情になった。
「豚の下敷きになって。そしてそのおっさんは助かった。優香が助けたのよ。結果的に」
「・・・」
「優香が死んだ時、そのおっさんと優香の血が私に飛び掛かって来た。その日、私はお気に入りの白いコットンのワンピースを着ていたの」
「分かる?これがどういうことか」
「・・、いや・・」
「そう、分からない。分からないの。いまだに分からないわ。どういうことだったのか。なんなのか。なんだったのか」
「全く分からないの。考えても考えても全く分からないの」
「優香の足はすごく変な方向に曲がっていた。すごく変な方向。ありえない方向だった。肉の塊みたいなおっさんの下で、足だけ出てた」
少女の目が少しだけ細くなった。
「大人はいろいろ教えてくれるでしょ。だから大人の人が誰か教えてくれるものと思っていたの。あれがなんだったのか」
「・・・・」
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