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「こらこら。人を死んだみたいに。
可愛い可愛い後輩のカオルコちゃんは、まだ亡くなってませんよ」
拝んでいる途中、どこからか声が聞こえた。
振り返ると、クンコとあみちゃんがいた。
「もしかして、今の話聞いてたの?
ていうか、いつからそこにいたの?」
「2人がキスしてる時から…」
「ウソっ?そんな前から?マジで見てたの?」
「嘘だよ。
あ、やっぱりキスしたんだ。
カマかけたらボロ出してやんの」
そう言って、クンコとあみちゃんは、ヒューヒューと、昔の華原朋美みたいなノリで私と原田くんを囃し立てた。
「ねえ、クンコ…」
私はクンコに、さっき原田くんが言った事の真相を訪ねようとして、やめた。
今の楽しそうに原田くんをからかってる彼女の姿を見てたら、知らないフリをしていてあげる方がいい。
「どうしたの?」
「ううん、なんでもない。
でも、ありがとう」
私は、「ありがとう」という言葉だけ伝えた。
「絶対幸せになってね。
二人の結婚式はあみちゃんとカオルコで、『てんとう虫のサンバ』歌うんだから」
私の「ありがとう」の意味が伝わったのかどうか分からない。
でも、「幸せになってね」と言ってくれている二人の気持ちを尊重し、グジグジ悩むより、二人の気持ちを素直に受け取るべきだと思うし、そうしなきゃならない。
「うん。そうお願いできるよう頑張るから。
あ、もし本当にそうなった時に『てんとう虫のサンバ』歌ってくれるのなら、実はいい衣装があるのよ…」
私がそう言うと、クンコは「副工場長から聞いたから知ってる」と笑った。
そして、なんとあの衣装、工場勤務のあみちゃん達が、副工場長からの指示で、若手工員の自主練習の一環として作ったらしい。
あみちやんも「こんなの誰が着るんだろうって思ってました」と笑った。
私も、みんなの笑顔を見て、つられて笑った。
でも、笑えてると思ってたのは私だけで、周りから見たら、私が泣いてるようにしか見えなかったみたいなんだけど。
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