星が綺麗ですね

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「そっか」  私の話を一通り聞き終えたミカちゃんは、ひとつ相づちをうった。  昼休みの喧噪はどのクラスも似たか寄ったかで、誰もが自己中心的な輪を築いている。だから、それほど大声で話していない私たちの内緒話なんか、誰も気にしてなんていないだろう。話の中に上がった登場人物たちも、今は教室にいない。まあ、居ないのを確認してから話し始めたんだから当たり前だけど。流石に、本人たちがいる前で噂話とかをする勇気はない。悪口なんて以ての外。聞かせるためとはいえ、悪口を本人のいる場所で言える子って、どんな神経をしているんだろうか。  喋り続けてからからになった喉を潤すために鞄から水筒を取り出して口を付けた。ごくごくと喉を鳴らして麦茶を飲む。けれど、いつもならお約束のように飛んでくるミカちゃんの「毎度ながら、美味しそうに飲むわよねえ」なんて呆れた声が今日は飛んでこなかった。  水筒に蓋をして、ミカちゃんに向き直る。前の席の椅子に跨がって、私の机に頬杖をつくミカちゃんは私の顔をじっと見ていた。じっと見たまま、もう一度「そっか」なんて言う。まるで、何かがミカちゃんの中で腑に落ちた、と言わんばかりに。 「ミカちゃん?」  ミカちゃんの様子を疑問に思った私は、彼女を呼ぶ。そうすると、ミカちゃんは誰よりも美しい黒髪を片方耳にかき揚げながら、私を見て言った。 「律は、白井のことが好きなのね」 「…はい?」  ミカちゃんのとんでも発言に、思わず聞き返す。え、いまミカちゃん何て言ったの。私が、白井くんのことが好き、って。 「いやいやいやミカちゃん待って、待ってミカちゃん。私、今の話で一言もそんなこと言ってない」 「うん、言ってないわよ」 「だよね!? …え、じゃあ何でそんな話に?」  私は白井くんの恋の話をしていただけであって、決して、それこそ神様に誓って私の恋の話をしていた訳じゃない。そもそも、これまで恋なんてしたことがないし、白井くんのことだって格好いいなあとか思うし授業中だって目の保養にと見ているけれど、それだけで。
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