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ぐるぐると混乱で頭を回し、思考が回らない私に、ミカちゃんはやはり淡々とした言葉を紡ぐ。
「あたしはさ、二年生の頃から白井と一緒に生徒会やってて。わりと長い時間あいつと一緒に過ごしてるんだけど。そうね、それこそ、高井寧々や岩室竜之介の次ぐらいにはこの学校の生徒で、同じ時間を過ごしてるんじゃないかな」
確かに、ミカちゃんは二年生の時から生徒会の一員だった。一年前は書記を勤め、今では副会長を務めている。白井くんも今や生徒会長、クラスは違えど接点はある方なんだろう。
「でもさ。あたしは、それだけ一緒にいても、白井が高井寧々のことを好きだったなんて、気付かなかったよ」
新村くんの恋は、目に見える恋だ。その対象である高井さん以外は皆知ってる。皆、分かってる。見るだけで熱を感じるような、だだもれの、赤い炎の恋。
だけれど白井くんの恋は、ちょっとやそっとじゃ目に見えない。静かに、密かに、涼やかに。対象も、周りも、気付かない。誰も彼も知らない。注意深く観察し続けてやっと分かる、内側に秘めた、青い炎の恋。
ミカちゃんも、気付くことの無かった恋。
ずっと近いところにいたミカちゃんが気付かなくて、接点なんて移動教室の授業中、しかも斜め後ろから眺めているだけの私が気付けた理由。私が、自分自身でも気付かなかった、その理由は。
「律は、青い恋を、していたのね」
青く心を燃やす恋を、白井晃太にしていたのね。
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