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「いつも青花(せいか)と申し上げているではないですか。人の名前も覚えられませんの?」
青花の挑発に女子の顔に青筋が浮いた。標的がみちるから青花に移る。
「エセお嬢様のくせに、その喋り方イラつくんだよ」
「丁寧な話し方をして、なぜいけないのでしょうか? ワタクシの言葉が気に入らないのであれば、まず貴方たちは服装を正しては?」
青花は手で彼女らの足元を指した。スカートは膝上までしかなく、中には太ももが見える女子もいる。
「そ、そんなの関係ないでしょ」
女子たちが口々に言った。しかし、青花は無視して腕時計を確認する。
「そろそろ先生方が教室にいらっしゃる時刻ですね。ワタクシやそちらの方が気に入らないのであれば、今からご相談されてみては」
青花が微笑みかけると女子たちは困ったように顔を見合わせた。みちるが隙を見て廊下を一瞥すると、授業のために先生が歩いてくる。すると、青花が目立つように手を振った。
「先生、ちょっと来ていただいてもよろしいですか」
青花に呼び止められ、さらに先生が向かってくる。女子たちは逃げるように自分の教室に入っていった。まもなく教科書や道具を持った先生が到着する。
「どうした、急に呼び止めて」
すると、青花はみちるの手を引き、先生の前に並んだ。
「彼女、まだ教室の場所がよく分からないみたいだったので。よろしければ同じクラスの人にしばらくついてもらうのはいかがでしょうか」
「そうだったのか。鳥井さん、気づかなくてすまないね」
先生に連れられ、みちるは教室に向かう。彼女は入る間際、青花に会釈した。それに対し、青花は指を揃え上品に手を振り、自分の教室に戻っていった。
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