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ふと、その人が俺の顔を見て一瞬ホッと安心を抱くようなため息を吐いてこちらに近づいてきた。
「貴方もこれからですか?」
「ああ、ついさっき着いた……裁判待ちだ」と淡々と返したらその人はヒィッって小さく悲鳴を上げながら身を寄せて囁いてきた。
「貴方……怖くないのか?」
そう言われて自分の感情と向き合ってみた。
だが、その人が言う恐怖は湧いてこなかった。
「分からない…」とだけ答えた。
「そうかい…羨ましいねぇ…」
そう言ってる間に大きな鳥居に着いていた。
その両端に門番のような鬼の姿もあった。
その鬼を見て人は俺の背中に隠れた。
「そこの門番さん…ここって順番制か?」って聞いてみたら一本ヅノの鬼が不機嫌そうな表情で答えてくれた。
「そうだ!まず最初はお前が先だ!」
そう言って鬼は俺の背後にいる人を首根っこを掴んで前に出した。
「ひぇぇぇ、放してくれ!!私が何をしたって言うんだぁぁ!!」と悲痛な叫びをあげながら鬼はその人をそのまま上へ連れていった。
「なんだ……隙を突いて逃げようとしたのか……」と呆れるように呟いたら、もう一人の二本ヅノの鬼が俺の事を睨んできた。
俺は鬼の意図を読んで笑みを浮かべてこう返した。
「俺は逃げないよ…むしろワクワクしてるんだ」
そんな俺の言葉に鬼は目を見開いていた。
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