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鬼 娘
俺は石で出来た階段を一つ一つ登っていった。
やがて登っていくうちに獄門所の屋根らしきものが見えてきた。
「へぇ、まだ数十段しか登ってないのにここから見えるんだ」と関心の言葉が漏れたとき、誰かが俺の背中を叩く気配がした。
それで、振り返ってみると一人の一本ヅノの鬼なのだが臆病者を連れていった鬼とは違うものだと雰囲気で感じた。
その鬼はとても優しそうな顔をした女性だった。
「貴方ですか?物怖じしない死者というものは?」
そう聞かれて俺は「知らないな」と無表情で返して歩を進ませた。
「こら、無視しないで!」と怒鳴ってきて俺の後を追いかけてきた。
どうも、この階段はとてつまなく永くまだまだ頂上まで遠かった。
だから退屈しのぎに話すことが出来た。
「それで何が聞きたいんだ」
その言葉に期待を持ったのか鬼の女性は興奮気味でこう聞いてきた。
「私、霧って言うんだ。それで質問はなんでそんなに怖くないの?」
直接それを持ち出して一瞬驚いてしまうけど、意味深な感じで答えた。
「俺の経歴を見れば一目瞭然だと思うが?地獄の人ならばな」
そう言ってあげたら霧は腕を組んで唸ってしまった。
その様子を見て俺はあることに気づいた。
「もしや、見習いか」
その言葉を言った瞬間、彼女は図星を突かれたのか俺の方を見て照れ笑いした。
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