Prologue

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 いくら『上』からの命令だと言っても、休日のひとときを楽しんでいた俺に、電話が来たときは泣きたくなった。 嘘だろ……これから、スーパーの福引きがあんだよ。列が。せっかく取った先頭が。  全部が台無しになるような急用だ。 よっぽどのもんじゃなきゃ許さん。と怒りに拳を固める俺の耳に、電話越しに社長からの声。 「藍鶴が、いなくなった。探せ」 あー、はいはい。 藍鶴は、同じ会社の同じチームなのだが、どうにも繊細な部分があるようで、何かあると逃げ出してしまう。 会社はあいつを怒らない。俺だって、逃げていいと思うような強烈なトラウマを植え付けた『何か』に、関わらせた責任があるのは、会社の方だから。 それでも、俺たちはそこから動かない。 藍鶴がやめることもない。
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