日常と非日常

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「よーい、」 地面の上に書かれた白いラインの上に手をつき、腰を高く上げる。 「ドン!」 限界まで重心を前に移動して、その反動を借りてスタートに勢いをつける。 風のように駆け抜ける二人はどちらも一歩も譲ることはない。隣で並ぶようにして足を動かす。 「ッは…よっしゃー!勝った!!」 「い、や、…今のはひな、の…ほうがはっ、速かったもん!」 スタートから100メートル先に引かれたゴールライン。20秒にも満たない競争を見守る人はいなかったので、僅差過ぎてどちらが勝ったのか分からない。 二人はいつものように言い合う。 「いや、そんなことねーなオレのほうが速かったな!」 「かけちゃんはいっつもそー言うよね…ひなに負けたくないからって!」 「そ、そんなことねーし!」 100メートル走をしていた二人、山崎駆と東間陽向はそれぞれ男子陸上部と女子陸上部の部長で、幼稚園以来の幼なじみだった。 家も隣同士でいつも一緒に遊んでいたし、どちらかが新しいことを始めれば必ず真似をしていた。そうして始めた陸上は共に短距離走で才能を発揮し、活躍している。喧嘩をすることも何十回、何百回とあったけれど、とても仲のいい親友だった。 「じゃあ、もう一本走ろう?それでかけちゃんに圧勝してみせる!」 陽向は握りこぶしを作り、ガッツポーズをしてみせる。 「はっ!きっとオレが圧勝するな!」
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