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「……この前、近所の保育園の子どもが散歩してるの見かけました」
オレの突然の話のフリに、仁さんは一瞬訝しげに目を向けたけど、すぐに先を促すように頷いてくれた。
「三歳ぐらいの子どもたちで、オレ、ついのんくんを探してしまいました」
それはちょうど一昨日ぐらいの話だ。
「見つけられなかったけど――当たり前ですよね。オレが知ってるのんくんはそれぐらいだけど、あれからもう一年も経つし、のんくんはもう大きくなってるはずだから」
だから、三歳の子どもたちの中にのんくんがいるはずはないのだ。仁さんがフッと笑った。
「そうだな。希望はもうすぐ五歳になる。大きくなったよ。すっかり生意気だ」
「五歳か……」
改めてそう聞くと、一年という時間の重みを感じてしまう。その貴重な一年を、オレは迷子のまま過ごしてしまったというわけだ。
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