step by step

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「元気にしてますか?」 「元気過ぎるぐらい元気だよ。機会があったら、また遊んでやってくれよ」  そんな仁さんの言葉に、オレは苦笑した。 「もうオレのことなんて憶えてないですよ」  仁さんは笑顔のまま小さく首を振った。 「たとえ忘れてるとしても、おまえのことはすぐに思い出すよ。よく懐いてた」  そう言うと、仁さんは「よっ!」と勢いを付けて立ち上がった。 「さあて。そろそろ組み分けするみたいだぜ。あっち行こう」 「あ、はい」  オレも仁さんの後に続く。仁さんはオレよりも少し背は低い。だけど、その背中はオレよりももっとずっと大きく見えた。  その背中に向って、オレは再び声をかけた。 「仁さん」 「ん?」  僅かに顔を向けるだけで仁さんが応える。オレは一度大きく深呼吸をしてから口を開いた。 「和音は――元気ですか?」  仁さんは立ち止り、オレを振り返った。そして、満面の笑顔で答えた。 「元気だよ。その上、最近ますます綺麗になってきた」  そしてまた前を向いて歩き出す。オレは一瞬絶句してしまったけれど。  ――なんだか笑いが込み上げてきた。足を速め、仁さんの隣に並んだ。 「今の、のろけですか?」 「あれ、そう聞こえたか?」  オレを横目で見やりニヤリと笑う。オレも負けじとニヤリと笑った。 「オレ……決めた。今日は仁さんを徹底的にマークすることにします。シュート打たせない」 「お。上等!」  バン、とオレの肩を叩き、仁さんが駆け出した。オレもそれに続く。  降り注ぐ春の日差しは、暑いぐらいにあたたかかった。 ~おわり~
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