step by step

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 女の子は座ろうとしている中途半端な姿勢のまま固まっている。その変な体勢がなんだか可笑しくなって、思わず小さく吹き出してしまった。そんなオレに彼女は困惑したらしい。 「え? あ、あの?」 「あ、すみません。とりあえず座ったら……」 「あ! は、はい!」  女の子が慌てて腰を下ろす。 「ご、ごめんなさい」 「いや、オレの方もごめんなさい。つい」  オレは改めてその子の姿に目をやった。 「その制服が懐かしくて」  女の子が顔を上げる。目のクリっとしたかわいらしい子だった。オレの目を真っ直ぐに見返す。最初緊張した面持ちだったその子の表情が、ゆっくりと和らいでいった。 「うちの卒業生ですものね、木村さん」 「え?」  思わず目を丸くした。知ってる子だったっけ、と慌てて記憶を探るけど、全く覚えがない。  戸惑うオレに、その子は少しだけ悪戯っぽく肩をすくめてみせた。 「ごめんなさい、不躾に」  そうして改めてオレに向って頭を下げた。 「私、久本香月といいます。今三年です。木村さんが三年生だった時は一年でした」  ひそひそと、あくまでも他の人の迷惑にならない程度の声で久本さんは話す。小さな声なのに、はきはきとして聞き取りやすかった。 「だから、木村さんのこと知ってるんです。なにしろ、女子の間ですごい人気でしたから。かくいう私もファンの一人でした」 「ふぁ、ファンって……」  どう答えていいものかわからず、曖昧に笑って頭をかく。
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