step by step

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「木村さんはまたここに来たりしますか?」 「さあ、どうだろ。どうして?」 「なんとなくです。またお話しできたら嬉しいかなって」  何の打算も含まれていない素直な言葉。悪い気はしなかった。 「来るとは約束できないけど、もし来た時は声をかけるよ。――じゃあ、頑張ってね」 「はい、ありがとうございます!」  明るく答えた久本さんに軽く手を振って、その場を離れた。本を元の棚に戻し、そのまま図書館を出ることにした。  少し時間は早いけど、もうバイト先に向かおう。そう決めて歩を進めながら、歩く足取りが来た時よりも軽くなっていることに気付いた。人と話をしたせいだろうか。  さっき会話をした子の名前を思い出しながら、確認するように頭の中で繰り返した。  久本さんだっけ。久本香月――。 「か、ず……」  声に出して、つい足を止めてしまった。心の中でその音を繰り返すと、なんだか意味のわからない笑いが込み上げてくる。  何の悪戯だろうか、とため息をつきつつ上を仰いでしまった。  雲一つない青い空が広がっていた。
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