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それから次の週もその図書館へ行った。
久本さんもそこにいた。この前と同じ席に座って勉強をしている。彼女はもともと人懐こい性格なのか、オレが声をかけると、もうずいぶん前からの知り合いのように、気安く応じてくれた。かといって馴れ馴れしくもなく、一定の節度はちゃんと弁えている。ちゃんとした子だ、という印象を持った。
オレも前と同じ、久本さんの隣の窓際の席に座り、本を広げる。今度はちゃんと読むために選んだ本だ。でも、読書など別にここに来なくてもできる。なのにここに来たのは、やっぱり彼女に会うためなのだろう、と思う。
一目惚れだとか、彼女のことが気になったからとか、そんな甘い感情があったわけではなかった。
久本さんが「カズ」だったから。妙な偶然に興味を持った。ただそれだけ。
そんなバカな理由だ。意味のないことをしていると思う。本当に、オレは何をやっているんだろう……。
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