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人は夢を叶える入り口に立ったとき、具体性より、ありきたりの現実に納得するのではないだろうか。少なくともわたしはそうだし目の前にあるのは輪だ。
正確にはトゥハーフィッチズ。二結びの輪。閉まるうえ強度が強い結び方だ。水引を縦にしたような縁起の良い、いっそ可愛らしい結びの輪。しかしこれを使い、わたしがしようとしていることは縁起がよいどころか、引き際。人生の終焉。
そう。死のうとしているのだ。
理由は紆余曲折の結果だが、一言でいってしまえば社会から転げ落ち、そこから這い上がれなかっただけのことだ。
――生きることに疲れました。
ベタだ。ありふれすぎて笑うどころか、見向きもされない一行。
それでも精一杯やってきた。融通が利かないといわれるほど真面目さだけはあったので、とにもかくにも現状に向き合った。それは自負できる。もし、死のうとしている人がいるなら、その選択は間違っていない。老いも若きも一緒だ。死に差別も区別もない。そこに至るまで悩んだはずだし、相談しただろう。もしかして医者にかかり手助けを求めたかもしれない。だからこその結果だと思う。
もうわかっていると思うが、そうだ。誰も助けちゃくれない。
夢の国の幻が解けた。ぽんっ。ようこそ現実へ、だ。
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