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それからしばらくの間、マスターと琢磨と3人でワイワイ盛り上がった。
明日も仕事なので、そろそろ帰ろうかと
「ご馳走様でした。」
と、会釈して鞄を持ち席を立つ。
「琢磨、お送りして差し上げて。」
「はい。 お荷物お持ちしますよ。」
私の手にある鞄をさり気なく持ち、ドアを開けてくれる琢磨。
「ありがとうございました。 また、お待ちしております。」
「ご馳走様でした。また来ます。」
ドアを出ると、琢磨がニッコリと笑って
「大通りまで送りますね。」
「ありがとう。 でも、戻らなくて良いの?」
「大丈夫ですよ。 ちょうど他にお客さまもいらっしゃらないし。もうちょっとだけ、菜つ姫さんと一緒にいたいし…。」
「……っっ!!」
一瞬、私の足が止まった。
「あ…、す、すみません。 僕、変なコト言いましたね。」
「あ、いやっ…、大丈夫っ!」
「初対面のお客さまこんなコト言って…、マスターに怒られちゃうな…。」
少しは酔いが回って来たのか、言葉遣いも普通になってて、素の琢磨が見られた様な気がして、ちょっとだけ嬉しかったりする。
「僕、卒論も終わったんで、しばらくは週末だけですけど、あの店にいるんで。また来てくれますか?」
「そうなんだ…。うん、分かった。 じゃあ、次は週末にゆっくり行くね。 あ、ここで良いよ。 今日はありがとう。 おやすみ、またね。」
私は、ちょうど通りがかったタクシーを止めると、そのまま乗り込み、窓を開けて手を振った。
「ありがとうございました。またお待ちしております。」
琢磨は、直角に体を曲げて、タクシーが出るまでお辞儀をしていた。
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