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金曜日、今日は会議があって退社時間が遅くなってしまったけれど、ロッカーでいつもより少しだけ丁寧に髪や化粧を直して、なんとなく軽い足取りで、あの『Chaser』を目指していた。
そんなに急いだつもりは無かったけれど、ドアの前でちょっと上がった息を整えてから、逸る気持ちを抑えつつドアを開ける。
「「いらっしゃいませ。」」
マスターと琢磨が声を揃えて迎えてくれる。
「菜つ姫さん。 来てくれたんですね。 また、お会い出来て嬉しいです。」
琢磨が可愛らしい笑顔でオシボリを出してくれる。
あっ、八重歯。
「こんばんは、琢磨くん。 今日はスクリュードライバーをくれる?」
「かしこまりました。」
「何か良い事でもありましたか?」
「えっ? いえ、特には…」
「そうですか? 今日は、いつにも増して笑顔が素敵ですよ。」
マスターに言われて、そんなに顔に出てるかと恥ずかしくなった。
琢磨と私じゃ釣り合う筈も無いけど、時々はこの店に来て、楽しくお喋りして美味しいお酒を飲めればそれで良い、そんな風に思っていた。
お陰で『Chaser』に来る楽しみも増えたコトだし。
これまでの私を思えば、それでも充分だ。
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