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男って単純な生き物だな。そう佑太は思った。このまま未央との出来事が曖昧なまま流れ去って行くことを、佑太は心の中で密かに祈った。と同時に、珍しく会話に加わらずにコーラのストローを口に咥えてぼんやりとしている慶太のことが気にかかった。
「どうしたんだよ慶太、珍しく静かじゃん。もしかしてテストの出来が相当悪かったり?」
佑太は少しおちょくるような口調で慶太に話しかけた。
「……ん? ばーか、テストの出来なんかどうでも良いよ。ちょっと考え事してただけだよ」
「お、慶太が考え事? これは珍しい」
すかさず章人が茶化しに入る。
「俺だって考え事くらいするに決まってんだろ」
「なあなあ」
再び光太郎が話に割って入った。光太郎のマイペースさはいつだって崩れない。
「あそこにいるの、うちのクラスの横山じゃない?」
光太郎が指差す方に三人は一斉に視線を向けた。見ると、明成高校の制服を来た女子四人が笑顔で言葉を交わしながらテーブル席にちょうど座る所だった。その女子四人組の中で、右奥の席に座った一際スタイルの良い少女は確かに同じクラスの横山 葉月だった。
「ほんとだ。横山って確かバスケ部だったよな。女バス、今日は練習休みなんだな」
章人が声のボリュームを幾分落としながら言い、続けて「そう言えば」と口にした。
「横山って、佑太と同じ中学だったよな確か?」
「……ん、ああそうだよ」
「横山も良いよなあ、スタイル良くて顔も整ってるし。人気出そうじゃない?」
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