プロローグ

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久々の大雨。外に出れば傘に押され、家に入れば、家族に押される。 今年、22の俺は押されまくる人生を歩んでいる。 外に出て、風邪に当たりながらタバコを吸う日課も、 今日は出来ないみたいだ。 窓を通して見る雨粒は、それが宿命かのように遠慮なく地面にぶつかる。 空気中の水蒸気が冷やされ雨になる。 重力に従い、地上に落ちていく。 そんな当たり前の理は、意味を成すのか? いや成さない。 同窓会に行かなかった俺を、親は薄情者など言った。 学費を払い行かせた学校。そこで、培った学力と人間関係を無下にするのかと。 そんなつもりは毛頭ない。むしろ、行こうとしていた。 だが、スーツを見に纏い、旧友と語らい、朝まで呑みまくる。 そんなことを考えていたら、歩く足が重くなった。 こんなことより、やることはあるじゃないかと、もう一人の自分が叫んでいる。 こう、うまく言葉に出来ず趣味といっていいのかわからないが、 俺は妖精と話せる。 1年ほど前から、雨の日に限って現れる。 こんなこと、誰にも話せないし話したって信じてもらえないのは分かってるから俺だけの秘密。 今日ももうじき現れるだろう。 スゥーと部屋に入ってきて、机の上に座る。 第一声は、 「今日こそは、一緒に来てもらおうか。」 毎度、この言葉を初めに言って、一日が始まる。 どこの世界かだって? それこそ、信じてもらえないだろう。 1年前、俺は怪物に変わった。 雨の日にだけ、能力を使える怪物。 妖精に、俺がなぜこの力を使えるのかと聞いたことがある。 答えは、 「使えるから、使えるのだ。」 だそうだ。 この世の中、存在自体が理由なことの方が多い。 理由のない物などなく、それは存在が理由らしい。 一方通行なそんな答えにおれは満足してしまった。 火がつくから、木が燃える。 ではなぜ、火は発生する? そういう、化学的な問は好きではない。 燃えるから火も生まれるのだ。 空気中で冷やされた雨が、 重力に従い地面に落ちる。 濡れるから人は傘を使うし、 自分を守りたいから人の傘を押す。 他に、理由はない。ただ、そうあるべきものだからだ。 俺は、レインという妖精から、力を貰った。 身に纏うこの力を、[レインコート]と名付けた。 当たり前を正す力。 レインとはつまり、雨である。
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