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そういえば介護士の俺のおふくろと、工場勤務のこいつの父さんは、今夜二人とも夜勤で帰って来ない。
今夜だけではない。これからしばらくこんな生活が続いていくんだ。
愛ちゃんと二人で毎日。
日の暮れ出す時間から。
この狭い家の中で。
一緒に夕飯食って。
交代でお風呂に入って。
お風呂に……やべ! さっき折角落ち着かせたのに再びテント張っちまった!
そういや女って、アソコどうやって洗ってるんだ?
男と違って中だから入れて擦るのか?
石鹸使う? 使わない?
シャワーぶっかけるのか? 桶の湯でピチャピチャやるのか?
「ハァハァ……もう俺は分からん!」
「気にしないでぇー、典くん」
気になるに決まってンだろ!
だって俺はおまえの事がッ――――!!
一度俺の心の中見てみろっ、っていうより、
ズボンのファスナー下ろしてくれよッ!
愛ちゃんのお風呂上がりの濡れた長い髪をタオルで拭いて乾かしている姿を想像してしまい身震いした俺。本場バイエルン産の極太ウインナー並みにそそり立ってるアソコがバレてしまわない様に手で覆いながら、力が抜けている重たい腰をムリヤリ持ち上げて窓に向かいヨロヨロと歩む。
まるで鏡の様に。
水玉模様のモザイクをかけた水滴で暈した窓が寝転んでいる愛ちゃんを映している。
据え膳食わぬは男の恥――――
水滴を手で拭い、汚く濡れた掌をじっと見つめる。
眠たくなったら……?
こんな彼女の事だから、『一緒に寝るか?』と冗談で言ったとしても、『いいよー、別に』と返してくる様な気がする。
……っつーか、いくら自分達の子供だとはいえ、貧しいから仕方がないからだとはいえ、血の繋がっていない年頃の男女を二人っきりにして置いていってしまう親も親だ。
どーなっても知らねぇからな。
変わらず窓の外で、俺の今の気持ちと同じ様に激しい音を立てて吹き荒れている吹雪。
ミシミシミシ……。
この家はボロのくせに懸命に耐えているけれど、
俺はもはや、こわれそう――――
【おわり】
「ねー、典くーん……」
またか……。もー勘弁してっ!
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