『青』……83回、妄想コンテスト。

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『青』……83回、妄想コンテスト。

北海道の夏は短い。 お盆を過ぎると、一雨ごとに寒くなり、青空には秋の清々しさが広がる。 午後の茶の間は、日が入ればそれなりに室温は上がるが、 風のある日は窓を開けるだけで、割りかし涼しい。 何気なくテレビを見ながら団扇(うちわ)を揺らし、幾何(いくばく)も無さそうな残暑を味わっていると、夫が帰ってきた。 「ただいまー。懐かしいから買ってきたさ。」 白い買い物袋から出したのは、青色と桃色のラムネだった。確かに、 「懐かしいねー。」 夫と向かい合い、ラムネで軽く乾杯した。 ガラスの瓶の触れ合う音が、少し涼しい。 ビー玉を下に落として、シュワーっとさせてから……一口。 口の中で炭酸を弱めてから、喉を通す。 はぁ…懐かしい。でも、こんな味だったのかな? 「ねぇ、こんな味だったっけ?」 「んー。こんなもんじゃない? 大人になったし、美味しい物に舌が慣れちゃったんかもね?」 「そっか。」
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