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「ルキノ・システィーナ」
「やあアトレイユ。ちょうど君を探していたんだ」
アトレイユの手に銃があった。
塩水をかぶっていてもう取り返しがつかないが、まだ作動するはずだった。
「リリーに指示を出していたのは連合。いや、お前だった。お前が元凶だ。俺の、唯一残ったものを、根こそぎにしたのはお前だ」
ルキノが立ち上がった。
「そう。確かに僕だ。僕が、君の希望を摘み取った」
「お前の命乞いを聞く為に、俺は生き残ったんだ」
「ははは。そうかもしれないね」
歌うような声で、ルキノはそう言った。
命の危機すら、何ら顧みない。空虚さがあった。
「僕はねアトレイユ。異世界からやってきた。ゼニスバーグは僕の恩人で、師匠でもあった。何百年と生きてる内に、僕の中は伽藍堂になった。力も、財力も、何も必要としない。生への執着もない。何にもないんだ。僕の跡を継げ。アトレイユ。何もかもを持ち、その実何も掴めない人生を、君にくれてやろう。島が吹っ飛ぶ前に、二人乗りのオートジャイロで脱出しろ。その先で、何もない人生を送るといい。臥待月。彼が新しいマスターだ。ああそれから、ゼニスバーグの全ては、臥待月が知っている。彼女を頼るといい」
わずか一発で、ルキノ・システィーナの人生は終わりを告げた。
転がった死体に残りの弾丸を吐き出し、撃ち終わった銃を捨て、臥待月に視線を送った。
臥待月は主人に頭を下げている。
「臥待月。来い」
主人の名に従い、臥待月は、新たな経済協力連合の総帥に近づいた。
彼女の服を、力まかせに引きちぎった。
メイド服の中は、みずみずしくハリのあ
る、少女の裸体だった。
力ずくで壁に押し付けた。彼女の片足を抱えて、一人、行為を続ける主人に、臥待月は甘い声で答えた。
射殺されたルキノ・システィーナは、瞳孔の開ききった、虚ろな目を浮かべていた。
了
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