生まれ出でるもの

6/6
前へ
/42ページ
次へ
「ルキノ・システィーナ」 「やあアトレイユ。ちょうど君を探していたんだ」 アトレイユの手に銃があった。  塩水をかぶっていてもう取り返しがつかないが、まだ作動するはずだった。 「リリーに指示を出していたのは連合。いや、お前だった。お前が元凶だ。俺の、唯一残ったものを、根こそぎにしたのはお前だ」 ルキノが立ち上がった。 「そう。確かに僕だ。僕が、君の希望を摘み取った」 「お前の命乞いを聞く為に、俺は生き残ったんだ」 「ははは。そうかもしれないね」 歌うような声で、ルキノはそう言った。 命の危機すら、何ら顧みない。空虚さがあった。 「僕はねアトレイユ。異世界からやってきた。ゼニスバーグは僕の恩人で、師匠でもあった。何百年と生きてる内に、僕の中は伽藍堂になった。力も、財力も、何も必要としない。生への執着もない。何にもないんだ。僕の跡を継げ。アトレイユ。何もかもを持ち、その実何も掴めない人生を、君にくれてやろう。島が吹っ飛ぶ前に、二人乗りのオートジャイロで脱出しろ。その先で、何もない人生を送るといい。臥待月。彼が新しいマスターだ。ああそれから、ゼニスバーグの全ては、臥待月が知っている。彼女を頼るといい」 わずか一発で、ルキノ・システィーナの人生は終わりを告げた。  転がった死体に残りの弾丸を吐き出し、撃ち終わった銃を捨て、臥待月に視線を送った。 臥待月は主人に頭を下げている。 「臥待月。来い」 主人の名に従い、臥待月は、新たな経済協力連合の総帥に近づいた。 彼女の服を、力まかせに引きちぎった。 メイド服の中は、みずみずしくハリのあ る、少女の裸体だった。 力ずくで壁に押し付けた。彼女の片足を抱えて、一人、行為を続ける主人に、臥待月は甘い声で答えた。 射殺されたルキノ・システィーナは、瞳孔の開ききった、虚ろな目を浮かべていた。 了
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加