6人が本棚に入れています
本棚に追加
「左大臣が並の容貌の男ならば、六条の方も派手な衣装を作るよ。並みの衣装のものだからこそ左大臣の姿を目立たせ、左大臣の美貌が引き立つのだ」
帝も東宮の首の下をくすぐって、東宮がケタケタと笑った。
「左大臣なら、気を引きたい女房がいればすぐに落とせることだろう。和歌などいらぬ。まあ、落としたくなる女房などいまいがな」と帝に続けられると、女御は自分の女房たちを馬鹿にされたような気がした。
しかし、左大臣本人が雇った女房たちなのである。
全部兄上が悪い。
「立てば芍薬、座れば牡丹。朕も子どもの頃からなんと美しい人だと思ってたのだから。そう思わぬか」
左大臣が女だったら抱きたいとでも?ついに女御は帝に顔を向けたが、怪訝な顔をしてすっと帝から目をそらし、腕の中の東宮に笑いかけながら言った。
「私にとっては、兄の一人ですから。それと、宮中を下がっては兄もそれなりに派手な衣を着ますよ。ね、東宮さま」
「自分で選んで着るのか?」
「まさか。六条の御方が作った中から、朝、前の晩に共寝をしていた女が選ぶようですよ」
帝はふうっと息を吐いた。「朕が女だったら左大臣に抱かれたい」とでも言っているようではないか、と女御は怪しげに帝を見つめた。
「主上、どうされたいのです?」
「左大臣ほどではないとしても、もう少し短く、見苦しくないようにして欲しい。せめて、高欄に引っかけないようにして欲しい」
最初のコメントを投稿しよう!