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女御は、「一上の兄上が煌びやかで長い長い下襲の裾を自慢げに歩いて、兄上の財力と地位の高さ、そして六条の方の趣味の良さを見せつけてやればよろしい」と言ったのだが、左大臣は別のことを考えていた。
六条の御方と愛妾の本院の方が左大臣に着付けた。
左大臣は妻妾の全員に姫君たち、それに侍女を集めて、どうじゃ?とばかりに、青白橡色の裾を手に持ってくるりと回ってみせた。
通常、誰かに持たせるわけではないならば、下襲の裾は石帯にかける。
しかし、あまりに長すぎるこの裾は、優雅に手にかけられて孔雀色に見えて、雄の方が派手な孔雀そっくりだと女王は思った。
左大臣が六条の御方をちらりと流し目を送ると、六条の御方は夕べのことを思い出したのか、興奮して息が上がった。
腹の大きい本院の方に流し目を送れば、本院の方は顔を赤くしながらも流し目で応じた。
左大臣が侍女たちを見ると、侍女たちからため息が漏れた。
北の御方はそれを楽しそうに見ていたが、真正面から左大臣が見つめて微笑みかけれれば、流石の北の御方すらもどきりとする。
行ってくるよ、と本院の方の大きく迫り出した腹を撫でて左大臣が出て行けば、六条の御方がドギマギしながら言うのだった。
「姫たちにあんな美しい男性を見せたら、婿取りが大変なことになりませんか?」
「姫たちは、フン、あんなおっさん、と思ってますよ」と女王は返した。
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