青瓢箪

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 が、俺の予想に反し、青りんごがオーディションに合格したという知らせを風の噂で聞いた。これから研修生として忙しくなるんだろうな。  俺は俺で高校を出ると生きるため就活を始めた。毎日の栄養剤代も馬鹿にならないからだ。  ただどんな仕事をやるにしても、それなりに体力は必要だ。なので俺を見た面接官は決まって怪訝な表情を浮かべた。  当然だ。俺も採用する立場ならこんな青びょうたん採るわけない。仕事中に倒れられても困るからな。  てなわけで受けた企業は尽く不採用。それどころかバイトすら断られる始末。  くそっ。何で俺がこんな目に遭わなきゃならねえんだ。それもこれも全部、アイツのせいだ。だが当の本人は何も知らず生きている。俺に悪気も感謝も感じる事なく、のうのうと。  ふざけるな。今お前が生きてるのは俺のお陰なんだぞ。俺がお前をずっと生かしてやってたんだ。特別仲が良くなければ好きでもない、只の同級生のお前を。  お前さえ……お前さえいなければ、俺はこんなに苦しまず、惨めな思いをしなくて済むんだ。  駅前通りの看板に貼られているAOMのポスター。その片隅で笑顔を見せる青りんごを俺は窪んだ目で睨みつけた。
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