青林檎

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 国語の授業の時も俺はやっちまった。 「もう、よだかは、落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした」  教科書と向き合い、宮沢賢治の『よだかの星』をたどたどしく朗読するクラスメイト。 「よし。次、葵」  担任に指名され、青りんごは席を立つ。 「それからしばらくたって、よだかははっきりまなこをひらきました」  いつもの弱々しい声ではなく、明らかに他の奴より感情が込もっていた。 「そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでも、いつまでも、燃えつづけました。今でも、まだ、燃ぇてぃます……」  最後の方は声が上擦っていた。読み終わると青りんごの席からすすり泣く声が聞こえた。それが皆に伝わり、教室内は重い空気に包まれた。  湿っぽいのが嫌な俺は、いつもの調子で明るく言ってやった。 「なに泣いてんだよ。これ作り話だろ」  涙を拭う手を止め、青りんごは俺を見た。顔は青いが目の周囲は赤い。 「つーか、この鳥は生きるのが嫌になって自分から星になったんだよ。つまり自殺だ。そんな奴に同情する必要ないだろ」 「浦成、意見は手を挙げて言え」 「あ、そっか。お前もよだかと同じで生きてるのがしんどいもんな。自分もそのうち星になって燃えつきるかもしれないってビビって」 「浦成! もう黙れ!」  担任から凄い剣幕で怒鳴られ、俺がビビって泣きそうになった。
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