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召還術。
それはどこかにいる存在を呼び出す魔法。
条件を満たし、魔力を消費すれば誰でも使える。
一つ、召喚したい対象と縁あるモノ。
二つ、制限と代償による契約内容。
三つ、実行者の魔力が一番高くなる時。
四つ、召喚術に適した場所。
ある者は願いを叶えてもらい、ある者は戦争で離れた恋人と出会い、ある者は呼び出した何かを使役した。
瞬く間に世界で召喚術は流行した。
しかし、気軽さ故に秩序は大いに乱れた。
召喚したモノ同士で争いを起こし、戦争まで発展。小さな国では反逆者が王を暗殺。別の国では行方不明者が続出。
無くなった国も一つや二つではない。
危険視した王たちは直ちに召喚術を禁止する法を定め査問会を設立し、破る者を厳しく罰した。
禁忌とされた召喚術は風化し、魔法使いたちの歴史に存在のみ記されるようになった。
時は過ぎ、人々の記憶から召喚術自体が消えつつあるが、消滅する事はなかった。
暗号化された書物や口頭で伝わり、多くはないが確かに存在はしている。
禁忌とされる召喚術を実行するため、マリーは人里から離れたみすぼらしい小屋で毎日、実験に没頭していた。
寝室と居間を含めて二部屋しかない小さな部屋だが、一人暮らしする分には申し分ない。寝室は一度着た衣類の山とゴミで埋もれており、歩ける隙間がかろうじてある程度だ。入口までの通路は綺麗だが、居間も寝室同様ゴミに埋もれている。実験器具や筆記用具、本や杖といった道具で溢れている。
中央には少し大きめのソファが置いてあり、その横にはコーヒー豆を詰めている箱が積まれている。
一番奥にはマリーがいつも作業をしている机がある。
上には飲みかけの飲み物が入った木製のマグ、インクで汚れた羽ペン、筆記帳など散らかり、その横にはマリーが愛用している杖が立てかけてある。
先端部分は鳥の頭部を模しており、目にあたる部分と身体の箇所に宝石が埋め込まれている。
「明け方は「×」、昼間も「×」、夜「×」となると、やっぱり召還に適した時間は夜中ね」
魔女の時間帯とも呼ばれているし、と呟きながらマリーはかなり使い込んだ書物に実験結果を書き込んでいく。
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