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「うぅーん。とりあえず、一段落ね」
両手を上げ身体を伸ばすと、マリーは器用にゴミを避けて歩き、コーヒー豆が入っている箱の前へ来る。
「朝はいつも少し冷めたブラックでキメるけど、今日は成功へ進んだから。ちょと奮発して、アツアツの砂糖多めのにしよっと」
気分が高揚しているマリーは素早く蓋を開けると呪文を唱えた。すると、箱からコーヒー豆が浮遊した。
掌に乗る程度の量の豆は、突如出現した小さなつむじ風によって、粉上になるまで切り刻まれる。
「そして、次は水と火だ」
マリーはまた違う種類の魔法を使った。マリーの横に小さな火の球と水の球が出現する。そして二つの球がぶつかり、一つの魔法球になった。
「うん、上出来」
コーヒーの粉と出来立てのお湯の球を混ぜ合わせる。
「確か、あっちにまだ使ってないマグがあったはず」
マリーは出来たてのコーヒーを予備のマグに入れる。
「うんうん、我ながら上出来。いい香りだわ」
鼻歌を歌いながら、魔法でコーヒーを淹れる。これがマリーの日常の始まりだ。
「あ、そういえば扉が外れたままだったわ」
コーヒーを飲み終えたマリーは明け方の実験で、小屋の扉が吹き飛んだまま立った事を思い出した。
呪文を唱え、外れた扉を元の位置に戻す。
あくまで戻すだけで、いくら魔法といえど、触媒もなしに破損した箇所や傷は直せない。
それと同じで原型から壊れてしまったモノや死者も戻せない。
「あ、しまった。罠の術式を施しておかないと」
実験をするため、魔法を解除していた事をマリーは思い出した。ドアに触れ、呪文を唱える。
「たまーに忘れる事があるからね。気をつけないと」
マリーはいつも設置している罠魔法を再び施した。見た目は通常の扉と変わらないが、マリーは扉にあらゆる魔法をかけていた。
力時間の大人が数時間、殴ったり蹴ったりしても壊れない強化魔法。
火や爆発などの魔法を使って扉を開けようとした場合の耐性魔法。
鍵を強引に開けようした時になる大きな音が鳴る罠魔法。
三重の魔法を施し、マリーは家に引きこもっていた。
扉ではなく、小屋全体を壊せるほどの大魔法を放たれた時は、そうなる前に気づくため、マリーは扉だけに罠魔法を設置していた。
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