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「よし、これでお仕舞いっと。ファーア……さすがにちょっと疲れたわね、仮眠でも取ろっと」
先ほどから欠伸が止まらない。コーヒーを飲んでも状況が変わらないのは限界が近いとマリーは六年の経験で学んだ。
――ドオォン
寝室へ向かう途中、突如と共に扉が吹き飛んだ。
突然のことで一瞬、呆気に取られるがマリーはすぐに状況を飲み込んだ。
轟音と共に眠気も吹き飛び、警戒態勢をしく。
(敵だと判明した瞬間、すぐに魔法を放ってやる)
マリーは机の横にある杖を掴むと、いつでも魔法が撃てるよう意識を集中させた。
「失礼します」
しかし、マリーの意気込みとは裏腹に緊張感が全然ない女声が聞こえた。
短い黒髪で眼鏡を掛けた女性が小屋の中へ入って来る。
(うわっ、すっごい美人)
突然の来訪者にマリーは率直な感想を内心で呟いた。
白の上着の上からジャケットを羽織り、腰には短剣と小物を入れる鞄が付いている。
無駄な肉が付いていない引き締まった身体は健康的な印象を与える。
(この美人、アタシと同じ魔法使い?)
マリーは女性の髪に付いている髪飾れを見てそう思った。
宝石は魔力は高めるのに最適な道具である。金に余裕があるなら、武器だけではなく、小物も身に付けたいとマリーは思ったが、そんな余裕はないとすぐに考えるのを止めた。
しかし、よく見ると髪飾りの宝石にはひびが入っている。興味がそそられるマリーだが、それよりも先に聞きたい事がある。
「既に失礼してるんだけど。アンタ、どうやってここに入ってきたの?」
マリーはついさっき扉に様々な術式を施した。それをいとも簡単に破るとは、相当の実力者である。
「どうやって? 普通に扉から」
「普通にって、そんなわけないでしょ!」
無表情のまま淡々と答える女性にマリーは更に警戒心を高めた。
「お嬢ちゃん、ここにアメリアさんって人はいる?」
「アタシがそのアメリアよ。要件は何かしら? 場合によっては荒い歓迎をするわよ」
杖の矛先を来訪者へ向け、攻撃の意思があることを告げる。
「失礼。人は見かけじゃないもんね」
「いえ、人は見かけよ」
人は見かけで判断すると誰の言葉かは分からないが、マリーは自分の不衛生な格好が的を得ていると思っている。
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