第一章 小屋

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「どうして、白魔法を選んだのかしら?」 「私、運動神経は良くないけど、力にはちょっとだけ自信がある」 「詳しく教えてちょうだい」  運動神経は良くないが力持ちである、というのがマリーにはイマイチよく分からなかった。 「体力はそんなに自身がない。だから戦いになった時、長引くと負けてしまうから、やられる前にやろうって考えた」  淡々と話すので自分のペースがあるのかと思ったが、意外にせっかちな性格なのかもしれないとマリーは考えた。確かに力に自身があるなら、魔法で攻撃するよりも殴って倒した方が早い。 「それじゃあ、次の質問だけど……」  その前に着席を勧めるマリーだが、目に写ったのは部屋の中央部にあるソファーだ。しかし、そこには本や召還術に使う小道具、脱ぎっぱなしになった服などが散らかっている。  マリーの顔は青ざめた。  普段、部屋には誰も入らないため汚部屋になっていても、マリーはどこに何が置いてあるのか把握しているため便利だと思っている。だが汚い部屋を他人に見られてしまった事が今更ながら、恥ずかしくなってきた。  顔を動かさず、目線だけで部屋を右から左へ見渡す。  右にはコーヒー豆が詰まった箱が隙間なく占拠している。  中央には壊れた扉と座るところがないソファー。  左には寝室があるが、そこは今よりも悲惨な状態になっている。  幸いな事にまだ寝室は見られていない。そこは一番汚く下着や食べ物、飲みかけのコップなどが置きっぱなしになっているが、一時的に物を移動させる場所には適していた。  常に掃除していればこんな事にはならないが、マリーの家に他人が来るのは随分と久しぶりの事だった。 「その前にちょっとだけ、外で待っててくれないかしら?」 「何故?」 「えっと、それは」  部屋が汚いから掃除したい、とは今更だが恥ずかしくて口が裂けても言えない。 「分かった。私、見た目通りお金は全然ない。今の全財産も林檎が1個買える程度……だから、身体で払う」 「ハッ?」  予想外の返答にマリーは困惑した。 「自分で言うのも変だけど、私自信があるの」  そう言うとミアは躊躇うことなく上着を脱いだ。ハーフトップの薄着が露になり、マリーには無縁な巨大な胸が揺れる。
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